紀行文を書く前に皆さんにあまり馴染みのない今回訪れたスロバニアとクロアチアの2カ国の歴史的背景について簡単に記することにする。スロベニアもクロアチアも以前は旧ユーゴスラビアに属し、社会主義路線を歩んでいた。この時のチトー政権で共産主義体制をとりながら西側諸国との融和を図っていた。その後、1980年チトー大統領没後ユーゴスラビア内で経済格差が拡大したため両国を筆頭とする6つの構成共和国が次々に独立に動き、1989年以降スロベニアを初めとするクロアチア、ボスニアなどが独立を成していった。しかし、スロベニアは10日間の内戦の後、いち早く独立を成したため、経済的立ち直りが早く、2004年にはEUに加盟した国である。それに対してクロアチアはチトー氏を初め多くのクロアチア人がユーゴスラビア社会主義連邦共和国の政治の中枢に居たため、他民族のセルビア人に支配権を認めなかった。そのためセルビア人たちの不満が高まり、独立に対しクロアチア人との内戦が続き、なかなか独立が成されなかった。1992年正式にユーゴスラビアから独立したが、しかし、両民族の戦闘は長く1995年まで続けられた。現在クロアチアはEUの加盟を申請しているが、未だ多くの国民がEU加盟を躊躇しているのが現状である。その理由は長くユーゴスラビアに支配されていた経験から、EU加盟後ドイツ・フランスなどの大国に再び支配されることを嫌っていると現地の年配の男性が説明してくれた。今回はこの2カ国の他、ボスニア・ヘルツェゴビナに数時間であったが入ることが出来た。
日本のように遠く離れた国から見るとバルカン半島にある国の状況はなかなか現地に行かないと分からないということが今回の訪問で改めて感じた。
<第1日目>
成田発12:30ルフトハンザ715便で最初の経由地ミュンヘンに向かった。2時間後オーストリアのクラーツ空港に到着し、そこからバスに乗り継いで最終地スロバニアのブレットに夜12:30過ぎに到着した。あまりの長旅でグッタリして深い眠りに入った。
<第2日目>
朝9時にホテルを出発してブレッド湖の聖母被昇天教会とブレッド城を見学した。教会はブレッド湖の中に浮かぶ小島に造られ、バロック様式の教会で17世紀に造られた、教会内はヘンリック2世と妻クリンダの肖像が飾られていた。前のローマ法王が訪れ、この教会に鐘を寄贈し、鐘を鳴らすと願いが叶えられるということなので私もそれにあやかって鐘を何度も鳴らした。次に湖畔の断崖(約100mの高さ)の上に建つブレッド城を訪れた。城から観るブレッド湖のコバルトブルーの湖面やその周辺の山々の眺めは最高で、何度もカメラのシャッターを切った。昼食はマッシュルームスープと仔牛のステーキを食べた。
その後、バスで1時間20分かけヨーロッパ最大の規模を誇るポストイナの鍾乳洞に行った。スロバニアといえば鍾乳洞といわれるくらい有名で、毎年50万人以上の観光客を集めている。私も他の世界の有名な鍾乳洞を見ているがこれほどの大きな洞窟を見たことがない。トロッコ電車で一番奥まで行き、そこから2〜3q散策し、更にトロッコ電車に乗って帰るというもので出口までに約2時間近く掛かった。神秘的で時空を遥かにこえた自然の驚異は素晴らしく感動した。
特にこの洞窟に住む“類人魚”と呼ばれる肌色のホライモリ(Proteus Anguinus)を見られたのは運が良かった。洞窟を出てから絶壁の中に建つ洞窟城の外観を見てバスに戻った。更に1時間半かけて首都リュブリアナに向かった。
<第3日目>
スロベニアで最も綺麗な街と称されるリュブリャーナはルネッサンス、バロック、アールヌーヴォーなどの様式の建築物が建ち並ぶ風光明媚な芸術の都である。街の中心にあるプレシェーレノフ広場を拠点にして三本橋、フランシスコ会教会、旧市街、市庁舎などがあり、その周りに青空市場やブテック、カフェなどが散在し、散策するのには最高に楽しい場所である。
特にリュブリャニツァ川の遊覧はロマンチックでいろいろな家並みや街の有名建築物や橋などを見られるので歴史を知ることが出来る。同行者と青空市場や旧市街のお店などをショピングして塩、チョコレート、民芸品などのお土産品を楽しんだ。お昼は古城ホテルでワインテイスティングとスロベニア料理を堪能した。ワインの飲みすぎでほろ酔い加減のまま次の訪問地クロアチアザの首都ザグレブへ。
ザグレブはカプトルとグラデツというふたつの中世の都市が併合して作られた町で当時の町並や教会、美術館、博物館、劇場などが散在し、クロアチアの文化を知る上で欠くことの出来ない町である。この街の中心にあるイェラチッチ広場からミニトレインで16分程市内観光して、聖母被昇天大聖堂、聖マルコ教会(屋根に描かれた紋章が特徴)、ロトルシュチャク塔を入場見学した。途中、中世の民族衣装を纏った人たちと話したり、記念撮影をした。ホテルまでは市街を走るトラム(路面電車)を利用して帰った。今日は充実した1日であったせいか気分良く眠りにつけた。
|