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イタリアの旅(1) 〜サンタ・ルチアとワンダーランドの国〜

この冬私は、輝く太陽と青い海を背景に歴史文化がさまざまに交差する南イタリアを訪れた。イタリアは1860年再統一されたシチリア島を含めて20州からなる長靴状の半島の国である。その内南イタリアは南部の5州からなる。

私は10年前にはミラノからフィレンツェ、ベネツィア、ローマなどの北イタリアを訪れた。今回は南イタリアでもシチリア島の最先端であるパレルモ(人口75万人)から旅立った。パレルモはアラブ人が831年ビザンチン軍を撃破して占領したシチリア支配の本拠地としたところで、唯一ギリシアの影響を受けていない都市である。アラブ人はこの地を果物や野菜を豊富に産する肥沃な土地に仕上げた。このパレルモはドイツの文豪ゲーテに「世界一美しいイスラムの都市」と言わしめたほど魅力的な町でもある。

翌日はシチリア西部の「神殿の谷」で名高いアグリジェントを訪れた。この都市はB.C.583年にギリシア人植民市ゲラの人々と母の市ロードスから新たに渡来した人々が共同で建設した都市である。ここは「神殿の谷」の名の通りヘラクレス神殿、コンコルディア神殿、またヘラ神殿などが集結する大遺跡の町である。「この都市を見ずしてシチリアを語るべからず」と言っていいくらい壮大な神殿群が印象に残る町であった。

三日目「モザイク」で世界的に有名なピアッツァ・アルメリーナを訪れた。ここではローマ時代の豪壮なヴィラの遺跡(カザーレの別荘)を訪問した。このヴィラはローマ帝国の「西の正帝」マクシミアヌスが金に糸目をつけずに造ったもので、中でも鮮やかな赤や緑の貴石や高価な色石ふんだんに使ったモザイクには色のぼかし効果により人物や動物の躍動する姿がリアルに描かれていた。この微細なモザイクが3500Fという広大な面積に施されていたのは圧巻であった。

その夜、イタリアを代表する保養地タオルミーナに到着した。タオルミーナはイオニア海とエトナ山を一望する風光明媚な地であり、ギリシア時代から長い歴史を持つ古都である。ここにはイオニア海を望む場所に「ギリシア劇場」があり、これはローマ時代2世紀に円形闘技場として利用されたものでシチリア第2の規模を誇る古代劇場だ。

この日午後には古代地中海の大都であったシラクーサを訪れた。シラクーサはB.C.734年、コリント人がシチリア東南部全体を支配下に治めたときに建設された都市で、アルキメデス生誕の地としても名高い。この地では15000人を収容できる「ギリシア劇場」が有名で、隣接する石切り場には細長い耳の形をした「ディオニュシオスの耳」があり36mの高さの洞窟は一見の価値があった。この夜ホテルでウニのパスタをたっぷり(タントタント)食べ2005年最後の夜を満ち足りた気分で過ごすことが出来た。ホテルの窓から望む向かい側の半島では、花火が打ち上げられて私の気分をさらに盛り上げてくれた。

翌日年も明け1月1日旅行5日目、早朝にタオルミーナを発っていよいよイタリア本土に渡るべくメッシーナ海峡をフェリーで渡った。メッシーナからはカラブリア州、バジリカーター州の2州を通過して444kmの長旅の後イタリア半島の南東、アドリア海に面したプーリア州バーリに到着した。バーリはアドリア海の中心的都市として古くは十字軍の船出の港として栄えた。人口34万人の新市街はイタリアを象徴する先端ファッションの店が軒を連ね、華やかな雰囲気を醸し出していた。ここで私は後半の旅に備えて十分に静養した。

特に、今回訪れたシチリア島というと多くの人はマフィアを連想すると思う。斯く言う私も若いころは映画「ゴッドファーザー」に熱を上げた一人で、マフィアの存在を確かめるのも旅の目的の一つとしていた。

マフィアは不在地主の管理人たちが集結して作った組織が起源で、彼らは小作農民を押えつけたりして地主に文句を言わせないよう一方的に有利な管理契約を継続させる集団だった。その後小作農民票を取りまとめて議員に売りつけて徐々にその勢力を伸ばし、政界と結託して公共事業から甘い汁を吸うようになった。不思議なのはマフィアの組織がシチリアの各界に深く浸透しているのにもかかわらず、誰もそのメンバーを知らない点である。旅の途中現地のガイドさんにマフィアについて尋ねると、いまだにマフィアの子孫の言い知れぬ圧力に恐怖感を感じてか詳しくは語ろうとしなかった。

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