朝6時に起床し、朝食後4WD車でメトラウイ駅まで行った。それはメトラウイからセルジャ渓谷までの16qを観光列車「レザールージュ(赤いトカゲ)」に乗ってパノラミックな旅を楽しむ為である。ただ日本と違い出発時間が来てもなかなか列車が来なかった。この列車の車両はチュニジアの王ベイ(オスマントルコの高官)のお召し列車を改造したもので豪華であったがそれは1車両のみで、客車は1両ずつ全部様子が違い、我々が乗った車両は貨物車両に座席が置いてあるだけのものだった。
出発の時間より早めに出てきたが、すでに団体ツアー客が殺到し座席が全く無かった。しかし車両と車両の間で知り合ったフランス人のおじさんがえらい日本人びいきで意気投合し、自分の座席を譲ってくれた。そうこうしている内に大自然の渓谷に到着し全員が降りて雄大な景色を満喫した。15分位たってからから再び列車に乗り、荒々しい山肌を抜けて終点セルジャに到着した。1時間半の列車の旅であった。
セルジャから再び4WD車で砂漠を抜けアルジェリアとの国境近くの山岳オアシスへ向かった。ここではベルベル人の住むオアシスの村シェビカ、タメルザ、ミデスを見るためだ。まず映画「イングリッシュ・ペイシェント」のロケ地で有名なミデスのバルコニーオアシスを見学し、タメルザのレストランで昼食をとった。次にタメルザにあるグランド・カスカド(大滝)を訪れたが、想像したより小規模で大きな滝を見慣れている私にとってはあまり興味を覚えなかった。
よほど小屋の集まるお土産屋さんを覗くほうが楽しかった。そして最後の訪問地シェビカの村に行った。ここは映画「インディ・ジョーンズ」のロケ地として使われた廃墟の村で更に村を抜けると濃い緑の固まりが見えてきた。そこは谷間に起状のある岩山があり谷底には湧水による泉が見られ、周りはナツメヤシが生い茂っていた。まさに映画の撮影にはもってこいの景観であった。
午後からバスで2時間半かけてドゥーズに向かった。この旅はバスの移動が多い為、最後列の座席で寝ようと思ったが、何しろ道路がガタガタでゆっくり休むことも出来なかった。ドゥーズに向かう途中塩の結晶が湖岸を埋める塩湖ショット・エル・ジェリドを横断した。この塩湖は西はアルジェリア国境から、東は地中海沿岸まで広がり、広さ約5000kuを誇る北アフリカ最大の塩湖である。
湖の道路端に掘立小屋のお土産屋さんがあり、ラクダの頭蓋骨や砂漠のバラ(ローズ・ド・サハラ)、水タバコ(シーシヤ)、革製品、などが売られていた。この小屋の後に行くとこの地でしか見られない珍獣“砂漠のキツネ”に出会った。最初は変わった犬だと思ったら店のおやじが「これはフォックスだよ」と教えてくれた。この小屋で飼われているらしい。何とか無事に今夜の宿泊地ドゥーズに到着した。この日は大晦日で夜New Year´s Partyがホテルで行われ、世界各国から来ている宿泊客で賑わった。私もダンスなどをして1年の垢を落とした。来年はどんな年になるだろう。
<第5日目>
日の出前の朝5時に起床し、ホテルから車で10分のところにある“ラクダ乗り”に同行者と出かけた。
ここドゥーズはサハラ砂漠の玄関口といわれ、見渡す限り大砂丘である。ラクダステーションでイスラム教徒の衣装を纏ってラクダに乗り40分位いったところで初日の出を体験した。ただ寒さが厳しく−3、4℃位のところをラクダに乗っていた為、体だけではなく手が凍りつくように冷たかった。一旦ホテルに引き返して朝食を済ませ、ホテルを出発した。次の訪問地はチュニジア南部に位置するマトマタである。この地には北アフリカの先住民族であるベルベル人が住む。彼らの住居は穴居住宅(La Maison Troglodytique)と呼ばれクレーターのように穴を掘り水で固めて作られている。マトマタは雨の少ない地域で乾燥している為、下へ穴を掘ることにより湿気を防ぎ、夏は強い日差しを避け、冬は保温性に優れている住居でまさに自然にマッチするように造られている。
ここから車で20分位行った所にやはりベルベル人の村に穴居住宅で造られたホテル・シディ・ドリスがある。このホテルは映画「スターウォーズ」の撮影に使われた場所であり、ファンの聖地ともいわれている。私もちょっとスターウォーズの世界に触れた感動を味わった。ただし料理はたいしたことがなかった。
次に、この日の最後の訪問地エル・ジェムに向かった。この地は古代ローマ帝国でも最も栄えた都市で1世紀には人口4万人が住み、交易都市とし繁栄し、2世紀にはゴルディアン皇帝のもと、コロセウム(円形闘技場)が建立された。世界3大コロセウムの1つでローマのコロッセオより若干小さいが保存状態は本家であるコロッセオよりも良いとされている。このコロセウムでは剣闘士の戦いや奴隷や罪人と猛獣の戦いなどが頻繁に行われていたという。
今日もバスによる長旅で疲れ果てスースに到着したときは、歩くのもやっとなぐらい疲れ果て食事後、深い眠りに入った。 |