古代における病気で人々にとって最も恐怖であったのが「流行病」である。それは診断法も対処法もなかったからである。そのため認定はできなかった。当然チフスやコレラなど細菌性疾患も特定できなかった。細菌による疾患が数百万年前に起こっていた物的証拠の特定は難しいが、前史時代の動物の化石における、細菌性疾患の記載が古生物学の文献に残っている。人類最古の歴史記録から類推すると種々の感染症が存在していたことは疑う余地もない。
古代エジプト時代のパピルスによると、感染症としては「フクオウ」と呼ばれた一種の丹毒のような病気や腸内寄生虫、種々の目の病気が多くあったようだ。また紀元前1200年頃のミイラに、天然痘と推測される皮膚の反転やマラリア感染によると思われる脾肥大が見られたと記載された文献がある。エジプト人を襲った多くの感染症は、汚染された水によるものが多かった。
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