ヒポクラテスの癒す力

2007.03.15更新
(32) 「弱い痛みが強い痛みに隠される」

<ヒポクラテスの教え> 
「別々のところに同時に2つの痛みが生じた場合、強いほうの痛みがもう一方の痛みを弱める」

このヒポクラテスのこの言葉を裏付ける理論が、アメリカとカナダの医学者によって発表されています。それによると、末消での触覚・圧覚・痛覚は、神経線維で脊髄後角(脊柱の中を通る脊髄の内、感覚神経が通過する部分)に伝達されますが、刺激によって興奮した神経はその太さによってこの部分でゲートが閉じたり開いたりします。

つまり、太い神経線維からの刺激を受けているときに、細い神経線維の刺激が伝わっても、それは遮断されてしまうのです。この理論は、それまでの痛みに対する考え方を覆すものであり、ヒポクラテスの言葉と一致する、最新の痛みに関する理論なのです。

実際、臨床の上からも私のクリニックで実証するようなケースがありました。20代後半の男性が交通事故によるむち打ち症状を訴えて来院してきました。当初は首のまわりの痛みと首が回らないことだけを訴えていました。しかし、交通事故で頚椎の挫傷(ねんざ)をした場合、同時に反動で腰椎部も前方にスライドするため損傷を伴うことがほとんどなのです。本人はそうした痛みはまったく訴えず、頚椎の損傷ばかりを治すよう哀願してきました。しかし、首の症状が徐々に軽減するにしたがって腰周辺の痛みが徐々に現れてきたのです。この例から言っても、弱い痛みは強い症状によって隠されているということになります。幸いなことに強い痛み、弱い痛み双方について施すことで全快に達した。まさにヒポクラテスの理論の正しさが実証された一例でした。


(71)骨の自然性 (1)
(70)流行病 (3)
(69)流行病 (2)
(68)流行病 (1)
(67)内科疾患について(3)
(66)内科疾患について(2)
(65)内科疾患について(1)
(64)病気を見分ける方法
(63)古代においての「急性病」(5)
(62)古代においての「急性病」(4)
(61)古代においての「急性病」(3)
(60)古代においての「急性病」(2)
(59)古代においての「急性病」(1)
(58)自然は病気の医者である
(57)四体液病理説
(56)ヨーロッパとアジアの違い(2)
(55)ヨーロッパとアジアの違い(1)
(54)病気と四季の関係(2)
(53)病気と四季の関係(1)
(52)人間の本性
(51)自然こそ病気の医者(2)
(50)自然こそ病気の医者(1)
(49)病は風の変化によって起こる
(48)古代特有の病「神聖病」
(47)古代の医術(4)古代の病気の形態
(46)古代の医術(3)ヒポクラテスの食餌法
(45)古代の医術(2)医術の知識の重要性
(44)古代の医術(1)医術の起源
(43)ヒポクラテス医学は全人的医学
(42)自然学から生まれた医者(Physician)
(41)神殿医学から自然医学に与えた影響(3)
(40)神殿医学から自然医学に与えた影響(2)
(39)神殿医学から自然医学に与えた影響(1)
(38)日本医学に影響を与えたヒポクラテス
(37)なぜ「医学の父」と崇められたのか
(36)医学は哲学から科学へ
(35)人間も自然の一部
(34)医師のモラルと良心(2)
(33)医師のモラルと良心(1)
(32)弱い痛みが強い痛みに隠される
(31)性ホルモンの影響を知る
(30)健康なときこそやるべきこと
(29)誰にでもある「癒す力」
(28)医者と患者のいい関係
(27)ヒポクラテス流・正しい医者の選び方(2)
(26)ヒポクラテス流・正しい医者の選び方(1)
(25)ワインの薬効
(24)ヒポクラテスの痔治療
(23)よい食習慣
(22)血液型による効果的な食事法
(21)病気を引き起こす原因は変化である
(20)気候風土と人間の関係性
(19)人間の体と季節の関係
(18)人間にとって最も大切なものは健康である
(17)病気を引き起こす原因は変化である
(16)人間が見る夢は心身の状態や病気と深い関係を持つ
(15)医者と患者のいい関係
(14)ダイエットの理想的な方法
(13)ヒポクラテスの人物像
(12)年齢と季節の関係
(11)女性は湿性で冷たく、男性は乾性であったかい
(9)「4」を持つヒポクラテス医学
(8)ヒポクラテスが教える120歳まで生きる法(2)
(7)ヒポクラテスが教える120歳まで生きる法(1)
(6)神経系を脅かす投薬治療
(5)治療は患者さん自身が自由に選択できる
(4)個人差を無視する現代医学
(3)医学の父ヒポクラテスが教える癒す力
(2)医学の父ヒポクラテスが教える癒す力
(1)医学の父ヒポクラテスが教える癒す力

Copyright(C) Natural Medicine Network