人間には自然治癒力という体の防衛機構があります。人間の体にはもともと雑菌やウィルスに抵抗する武器(抗体)が何千、何万と備わっています。しかし、抗体の力が低下すると、人間の体は非常にもろくなり、感染症にかかりやすくなるのです。
完全な健康体であれば大丈夫ですが、昔と違って自然なものを食べられなくなった現代では、なかなか自分の健康を自衛できにくくなっています。こうした「不健康の構造」が存在することに早く自分自身気づくことです。
健康とは、人間の精神と肉体の両面が外部の環境に適合した状態のことをいいます。人間の体は、いつも同じ状態を保っているのではなく、外界の変化に対して少しずつ対応しながら、調和を保つことによって健康な状態を維持しています。その変化対応能力が衰え、一方で環境変化が激しくなると、環境と心身のアンバランスが生じ、私たちの健康を蝕んでいきます。
病気の種類には、体質によって生じる病気、生活習慣から生じる病気、病気の状態からさらに余病として起こる病気、季節によって生じる病気があります。また、ヒポクラテスの時代から、泥地や湿地などからの臭気が原因となる場合や、水が原因となって生ずることが指摘されています。
ヒポクラテスは、
「病気を引き起こす原因は変化である」
と唱えており、変化が大きいほどその影響は大きく、気候、習慣、食物など病気の原因となりうるとしています。外的な変化に対する人間の精神状態、苦しみ、悲しみ、悩みなども病気と深いつながりがあることを見逃してはなりません。変化の機会が多く、その度合いも大きい現代社会だからこそ、食生活、運動、気候への適応力を高め、ストレスに負けないで楽しい人生を送れるように自衛する必要があるのです。
ストレスとは、「外部環境の変化に伴う生体内における反応」と定義できます。ヒポクラテスが指摘したように、社会的・心理的な原因によるストレスであっても、その重さは、物理的・化学的なストレスや病理学的なストレスと同じなのです。
毎日ストレスにさらされている人は、少なくとも深夜十二時前には寝るなどして、生まれながらに持っている自然への適応力を高め、自然治癒力を回復することが大切です。
現代は、ヒポクラテスの時代よりもはるかに複雑な社会になっています。不健康な生活がもたらす結果を早い段階で発見し、その症状にストレス医学で対応し、深刻な病気にならないように体質改善をしなければなりません。それが、これからの時代の健康と幸福の鍵を握っているのではないでしょうか。
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