ヒポクラテスは医療の中心を食餌法においていた。病人が健康な人と同じ飲食物をあてがわれ、他の環境や生活も同じようにしているだけで病気が治るならば、医術という方法は発見されることも探究されることなかったであろう。しかし実際は止むに止まれず人間に医という術を発見させ探求させるに至った。もし人間が人間以外の家畜(牛や馬など)およびすべての動物と同様のもの、例えば果物、草、木を飲み食いしていたら健康人が現在とっている生活様式や食物ですら発見されることはなかった。これらの動物達は事実、何らかの食生活を必要とせず摂取して成長し、苦痛など症状もなく生活している。
ヒポクラテスの食餌法は長い年月をかけて技術を加味してつくられたものである。太古の時代は人間は火を通したり、混ぜて薄めたりなどをせず生のまま摂取していたため、食餌によって何度となく恐ろしい仕打ちを受けてきた。時には重い病気や死に見舞われることも多くあった。そんな中生き残った人々は自分の体質に合う飲食物を見つけて生き残った。そして現在のような食生活となっていったようである。摂取するものが自分の力に勝る場合、体はこれをよく消化することができずそれらのものから逆に苦痛と病気と死に至ることになり、よく自分のものにすることで滋養と成長と健康を作り上げる。かくして苦痛の原因は強性の食物にあるということがヒポクラテスの食餌法によって発見された。
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