病はどのようにして起こるのか。ヒポクラテスはたくさんの原因の中で風の変化を重要視した。風向きによっていろいろな症状や病が現われることを重点的に調べた。南風のとき最も病はひどく、ついで北風で悪化する。その時回復は非常に難しい。その理由は脳が異常に湿っぽく粘液で満たされているためで、たびたび流れが生じても脳自体は粘液を分離することも乾燥することも出来ず、湿・潤で多量の湿気を含んだままになっているからである。例えば山羊の頭を切開してみると脳が湿っぽく水気に満ち、悪臭を放つ。そのことからも体を損なわせているのは神ではなく病気であることがわかる。それは人間も同様である。
病は風の変化によって起こり、南風が最もひどく次に北風である。ただし方向性と作用については互いに反対となる。北風は空気を引き締め濁ったものと湿ったものを分離し、澄んだ透明なものにしてくれる。また北風は脳を引き締めるが、病弱で水っぽい部分を分離して外へ洗い流すので、風の変わり目には体の中に流れが生じることは出来ない。それに対して南風は凝縮した空気を分解して散らし始めるが、初めから強く風が吹くわけではなく、吹き始めはわりと静かである。また南風は脳を弛緩して湿っぽくし血管を緩める。それと南風は大地にも海にも河川にも泉にも、およそ内部に湿り気をおびて生成するものに対して強く作用する。
脳が健康であれば空気がうまく体に作用し伝達してくれる。それがうまくなされたときは健康を維持してくれるのである。
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