古代の急性病は胸膜炎、肺炎、脳炎、せん妄性熱病、焼熱病などである。そして持続性熱病が多かったが、悪性の流行病はさほど広く流行することはなく、各種の病気が散発的に発生している場合の急性病による死者の数は、他の全ての病気による死者の総数を上回っていた。
ヒポクラテスは「急性病」についてひとつの考え方を持っていた。それは患者の養生法を主体にした「食餌法」と「健康時の養生法」である。
医者の役割は各患者ごとにその人の体質や普段の養生法、病状までを総合的に把握して、飲食物の種類や量、その他沐浴の適否にいたる方法を正確に判断することである。
特にヒポクラテスは「医者には患者が教えてくれなかったことでも知っておかなければならない多くのことが有るが、当時の医者たちはこれらを見過ごしていることが多く、しかも診断を下して、各種の病気のそれ相応の治療法を決定する場合でも、彼たちの説明は多くの点で私が判断することと違っている。それぞれの患者からどのような症状であるかを聞き取りを上手くすれば、医術の心得が少ない者でも正確に行うことが出来る」と記載している。