すべての文明・文化の成り立ちがそうであったように、紀元前のころ医学の世界もまだ混沌としていた。そんな中で経験の蓄積、病気や回復の原因の究明、医療技術の向上など、絶え間ない努力を続け自然医学の本質を見極めていった。ギリシャでは紀元前800〜600年頃、アナトリア半島西海岸を中心にイオニア文明が発祥した。エーゲ海から地中海にかけてのイオニアには人類の最初と言われる哲学者たちが誕生した。
イオニア自然学はいろいろな哲学者を輩出していった。「水」が万物の根源であるといったタレス、「空気」を万物の根源であるといったアナクシメネス、世界の根源は「火」(エネルギー)であると考えたヘラクレイトス、またデモクリトスは人間は原子が混ざり合ったものであるという原子説(アトム説)、最も有名な哲学者で医師であったエンペドクレスは「土、空気、水、火」の4つを根源として宇宙ができていると説いた。
イオニア学者やピタゴラスの哲学者が探求しょうとしたものは万物の根源と宇宙の構造であったといわれる。自然学をギリシャ語でPhusis(ピュシス・生む)と言う。英語で物理学のことをPhysicsと言うが、これは万物に共通する原理を探求するという意味からPhusisを語源したしたようである。自然万般のものに動物、植物,鉱物があり、それらに共通するのが自然(Physica)であることから、人間にとっては自然すなわち健康であり、その自然を調整する人を医者(Physician)とした。ただし、歴史上では15世紀に入ってから医者をPhysicianと呼ぶようになった。
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