医師の職業倫理については既に述べたように、宣誓の内容は時代や国によって変わり、宗教的な判断もこれに加わります。ここでは例としてアメリカ医学会が採用している誓いの項目を取り上げます。
「性別、宗教にかかわらず、厳粛に誓います。
一つ、医学という職業を忠実に遂行します。また、医学を職業とする人に対して、公正かつ寛大さをもって接します。
一つ、正しく誉れある生涯を送ります。また、自分の技術は、正しく誉れをもって使います。
一つ、患者がどんな家に住んでいようと、病気を治すためにだけ自分の力を最大限に発揮します。不正や堕落からは遠ざかり、他人を悪に引き込むことはしません。
一つ、自分の技術を磨くのは、患者の治療のためにだけです。頼まれても、たとえそそのかれたものだとしても、犯罪の目的のために薬を用いたり、手術をしたりはしません。
一つ、患者の生活についての秘密はもらしません。」
このように『ヒポクラテスの誓い』は世界中で医師が守るべき倫理として今も生き続けています。しかし、日本では近代的な西洋医学を明治時代に取り入れた際に『ヒポクラテスの誓い』は一緒に取り入れられなかったようです。かつて日本は「医は仁術」という言葉が生き続けていましたが、今では何か忘れられた存在になったようで悲しいかぎりです。もう一度欧米のように『ヒポクラテスの誓い』を正式に取り入れ、哲学を含めた医学倫理として医師及び医学生に教育して欲しいものです。
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