現代人の3人に1人は痔(じ)主といわれるほど痔に悩んでいる人が多い。特に、中年から高年の女性に多く、現代人の頭痛のタネであるとマスコミは報じている。痔は大きく分けて 1.痔核系 (肛門の血管障害) 2.痔ろう系 (細菌感染) 3.物理系 (物理的損傷) 4.その他 (肛門腫瘍、癌を含む)などがある。
では、古代ヒポクラテスの時代、痔という疾患についてどう考え、どう処理していたのか?ヒポクラテスによると痔は胆汁あるいは粘液が直腸の血管に溜まると小さな血管の中の血が温められ、さらに温められていくと直腸周辺の小血管から血をひき引き寄せ、血で満たされると直腸の内側が膨らむ、そして血管の先がせり出し一部は排便の際に押しつぶされ、一部は集まった血管に圧迫される。それによって痔はつくられる。
当時、痔の診断は容易であった。何故なら痔は直腸の内側に突き出ていて鉛色のブドウのようになっており直腸を押してみると簡単に血を放出するからである。
この時代の一番多く行なわれた治療は直腸を切開し患部を切り取り縫合し、焼灼し、患部を腐敗させて脱落させる方法だった。通常、焼灼したらレンズ豆やヤハツエンドウ(収縮作用や潰瘍を抑える作用)を水で煮て細かくすりつぶし5〜6日間それを己布(パップ)として貼り付ける。7日目以降はやわらかい海綿を薄く切り指の長さで貼る。その上にさらにリネン布をのせ、その上から蜂蜜を塗り、それを肛門の中に挿入する。
痔には流動食として、一日一回小麦粉かキビから作ったおかゆ、他にはふすま湯をすすらせた。その他には大量の水を飲ませた。排泄もあとお湯でよく洗浄させ、3日ごとに入浴する方法が主流をしめていた。
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