アスクレピオス神殿の中でもエピダウロス、コス島のアスクレピエイオンはつとに名を馳せ手いるが、もう1ヵ所有名なのが現在トルコにあるペルガモン(現名ペルガマ)神殿である。この神殿は他の神殿と違い統合医療施設として知れ渡った。かねてより知っていたが、実際の医療遺跡を自分の目で見て体験することが最良と考え、数年前訪れた。訪れて見て驚いたのは他の神殿と違いかなり古代としては合理的に造られていた。まず長い参道(聖なる道)を歩いて神域に入るとアスクレピオスのシンボルである蛇の紋章のついた石柱があり、入所を望むものは聖職者の診察を受け治癒の見込みのない者は神殿内に足を踏み入れることができなかった。これがいわゆる通過儀式である。
聖なる泉で体を清められた患者は、大理石を敷きつめた地下道を通り神殿の前を抜けて治療棟に向う。この地下道を通るとき聖職者が症状の回復をこめて換気口から暗示をかける。
患者はこれを神のお告げとして受け取った。これが「精神療法」の始まりである。また、この施設内には3、500人収容できる半円形劇場があり、患者に音楽を聞かせて心身の調和と統一を行った。これがいわゆる「音楽療法」の最初である。これがペルガモンの医療施設ならではのアスクレピレイオンである。 |