太陽や星の動きが生物に大いに影響を及ぼしていることが古代の時代から知られているが、それが生物学をなしていたようである。確かに科学的には不正確であるかもしれないが、真理の一つを捉えていることもまた事実である。
これらの歴史的なことから、健康と病気を純粋に合理的な方法で解説しようとしたのが前ソクラテス期の哲学者である。その代表的なものがクロトンのアルクマエオンが継承した「病気の自然な原因について」である。そこには「病気は熱や冷気の過剰による内的な原因で起こるものと、食物の不足や過剰による外的な要因で起こるものがあり、血液や骨髄および脳で生じる。またそれぞれの器官は特定の水・場所や、身体の疲れなどの理由が原因で起こっている」とある。
健康とはこれらの要素がうまく調和され、よく交じり合ったものであるという考え方がされていた。ヒポクラテスは人々の健康と気質に環境がどのように影響をもらたすかについて、系統的に纏め上げた。それが最古の論文である。特に気候風土と人間の関係に注目し、人間を取り巻く様々な外的条件である太陽・風・水と病気との関連について説明しようとしたものである。これがいわゆる“自然こそ病気の医者である”という考え方である。そしてこれは医師を志す者にとっては聖書的必修書でもあった。
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