古代・中世、そして近代を問わず、世界中の多くの宗教信者の中には科学的な医学の方法で病人を救うことができない場合は治療に神の加護を頼りにするものがいる。ましてや医学が科学として宗教から分離していない古代においては当然神に頼るほかなかった。ローマ時代はアレクサンドリアには二つの信仰があり、一つがイシス(女性で癒しの神)もう一つがセラピス(伝統的オソラピス信仰)である。この二つの信仰が主に絶望とされた患者を助けていった。その後、エジプトのイムホテップとギリシャのアスクレピオスの医神が奇跡といわれる病気を治癒させていった。それが神聖な癒しの術を磨かせ神殿による医療として発展していった。つまり神と医療の共存が相互に成り立っていたことを表している。紀元前480年頃になってヒポクラテスがてんかん(神聖病)、錯乱、狂気、中風など人びとを悩ませた病気の説明に超自然(神)的なものを排した。確かにアスクロピオスによる神殿治療は実際に効果はもたらしたが、病は神がかりで治るものではないと信じ、治療効果は自然(本性)に潜む力であると見抜いたからである。そしてさらに「空気・水・場所」の環境が人間の健康と病気に関係していることを医学概念とした。 |