これまでウォーキングの知識や決まり事について述べてきましたので、ウォーキングについては博識になったと思います。そこで、今回はウォーキングの医学的効用について詳しく述べようと思います。
紀元前2400年、古代の医学者ヒポクラテスは「運動には二つあり、自然なものと過激なものとがある。自然な運動とは、見たり聞いたり発音したり考えたりする運動である。これらは魂を動かす。もう一つは散歩である。散歩は腹と肢体を乾かし、腹に脂肪がつくのを防止する。」と述べています。いかに昔から散歩、つまりウォーキングが大切であったか分かると思います。最近の生理学的研究では、運動が少ないと最大酸素摂取量が低下し、血圧が上昇してくることがわかっています。逆に、高血圧の人が軽度な運動をすることで、血圧を下げる効果があることがわかっています。この軽度の運動とは、人と会話をしたり歌を歌ったり、ちょっと早めの散歩程度で十分なのです。
医学的に述べると、運動には有酸素運動と無酸素運動があります。前者は酸素を取り込みながら行なう運動で、ウォーキングや水泳などがこれに当たります。この運動を始めると最初に炭水化物のエネルギー源を利用してきますが、運動をさらに続けると炭水化物の利用が減ってきます。それによって乳酸も生成されないので長く運動を続けることが出来るのです。それに対して後者は、瞬間的大きな力を使う運動をいい、短距離競争や投擲競技などがこれに当たります。ただし、無酸素運動は大量の乳酸が生成されるため、長く運動を続けることは出来ません。
ウォーキングの有酸素運動を行なうことで、効果的に体内の脂肪(内臓脂肪)を消費し、筋肉の量や質を変化させて多くの血糖を取り込むことが出来ます。それによって、血液の中のインスリンの働きを妨げていた脂肪物質が減って、筋肉がスムーズに血糖を取り込むことが出来、インスリンの働きを高めることが出来ます。
終戦前まで、日本人は一日3万歩近く歩いていたといわれています。しかし、現代で一番歩くとされるサラリーマンでも、一日5千歩というのが標準のようです。一日に平均1万歩歩けば、体の全部の機能が活発になり細胞の代謝を多いに高めてくれます。
米国では、ウォーキングに対する知識が高く、約5000万人もの愛好家がいるといわれています。特に女性には多くの効用があるとされています。その一つが女性特有の「骨粗しょう症」で、これは元々50歳以上の白人女性を蝕む骨の病気でしたが、最近日本でも急激に増えているといわれています。その原因は食事によって起こりますが、何よりも原因の一つとされているのが運動をあまりしないことで、筋肉を使わないと骨格組織の固定化され細胞の代謝を弱めることになります。
<ウォーキングの医学的効用>
- 血圧を下げる。
- 消化等排泄を助ける。
- 関節の柔軟性を高める。
- 姿勢をよくする。
- ダイエットに効果がある。
- 心肺機能を高める。
- 体全体の血液の循環をよくする。
- 便通がよくなって、便秘が解消される。
- よく眠れるようになる。
- 体の老化を防ぐ。
- 精神的緊張を和らげる。
- 想像力を高めることが出来る。
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