広島県福山市の特養老人ホームで7人の高齢者が亡くなったのを皮切りに、全国の高齢者施設でノロウィルスによる感染性胃腸炎が集団発生しています。近年SARSや鳥インフルエンザなど、感染症の話題が続いていますが、あまり聞き慣れなかったこのウィルスはどんなものなのでしょうか。
●どんな症状がおきるの?
急性胃腸炎、といいますが、吐き気、嘔吐、下痢、腹痛、38℃以下の発熱が1日から2日続いておさまります。下痢や嘔吐がひどい場合には脱水症状をおこす事があるので注意が必要です。
毎年11月ごろから3月ごろまでの、気温が下がる冬に流行します。
●感染の原因は?
- ウィルスで汚染されたカキなどを十分に加熱せずに食べたとき。
カキの他にもあさりやシジミなどの二枚貝が原因になる場合もあります。
カキには「生食用」と「加熱用」がありますが、「生食用」というのは〈細菌〉の量で決めているので、〈ウィルス〉が含まれていないかどうかはわかりません。
- ウィルスを持った人が調理した料理を食べたとき
ウィルスの数が少量でも感染しやすいので、汚染されたカキを扱った調理器具や、すでに感染している人が充分な消毒をせずに調理を行った場合、その料理を食べると感染の危険があります。
- 感染した人の吐いた物、ふん便から感染
ノロウィルスは人の小腸内で爆発的に増殖します。発症した人の嘔吐物やふん便には大量のウィルスが含まれているので、これが二次感染のもとになります。感染した本人や、汚物の処理をした人が消毒に気を付けないと感染源になってしまうのです。
●予防するには?
- カキなどの二枚貝は十分な加熱をして食べるのが安全です。
- 嘔吐や下痢などの症状があった場合はなるべく調理にたずさわらないようにします。あるいは十分な衛生管理をしたうえでおこないます。また、症状がおさまった後も1週間は便にウィルスが排出されつづけますので、トイレの後の手洗いは重要です。
- 患者の糞便や嘔吐物には大量のウィルスが含まれています。乾燥するとウィルスが空気中に飛び散る危険があるので、床などに付着した場合はマスクや手袋を着用した上で、塩素系漂白剤を含ませた雑巾等で丁寧にふき取るようにしましょう。使った雑巾やタオルはビニール袋に密封して捨てます。
- 逆性石鹸やアルコール消毒はあまり意味がありません。とにかく手洗いを良くし、器具などは熱湯消毒や塩素系の漂白剤での消毒をします。
●≪Conclusion:結論≫
健康な大人であれば腹痛、下痢、嘔吐、軽い発熱程度ですみ、後遺症も無いので過度に不安がる事はありません。しかし、体力の無い年寄りや乳児は、命に関わる事もあるので注意が必要です。家族にこのような人がいる場合や、飲食業にたずさわっている人、高齢者福祉施設で働いている人は、十分に気を付ける必要があると思います。
特に、今回は高齢者福祉施設の感染症対策の未熟さ、不徹底さが浮き彫りになりました。これを機会に、衛生危機管理の整備が徹底されるようになって欲しいものです。
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