アナフィラキシーショック(2)後編〜生命をおびやかす急性アレルギー反応〜

説明

1902年、リチェットとポーチャーの2人の学者によりアナフィラキシーという言葉が誕生しました。記録には「イソギンチャクの毒素を犬に注射し、2〜3週後に同じ毒素を再び注射をすると、犬は嘔吐、出血性下痢などのショック症状を示し、死亡した。」とあります。このような現象は免疫とは反対の意味をもつ現象であり、防護状態「フィラキシー(-phylaxis)」とは反対「アナ(ana-)」の状態という意味で、アナフィラキシー(ana-phylaxis)と命名されました。
アナフィラキシーの症状が強く、意識がもうろうとしたり、血圧が低下したりする状態をアナフィラキシーショックといいます。
アナフィラキシーは、ハチ毒、食物、薬物、ラテックス(天然ゴム)等が原因で起こる急性アレルギー反応のひとつです。
アナフィラキシーショック(1)はこちら(アナフィラキシーショックとは)

アナフィラキシーショックの予防と対策

・食物アレルギー
アナフィラキシーの原因となる食品の種類としては、鶏卵、牛乳、小麦、そば、ピーナッツなどがありますが、その他、エビ、イカ、カニなどの甲殻類や、キウイフルーツ、バナナ、モモなどの果物類やゴマ、クルミなどたくさんのものがあります。食物アナフィラキシーの方は、食事の際、食品表示をよく見て原因となる食品を摂らないように気をつけてください。外食や店頭販売品は避けたほうが安全です。

・ハチ毒アレルギー
ハチ刺し事故を回避するために、屋外での作業や山歩きは、長そで、長ズボン、手袋などを着用し、肌の露出を避けるようにしましょう。また、ハチは黒い色や甘い臭いに誘われる性質があります。香水や黒い色の衣服は避ける方が無難です。ハチが威嚇音を発し近づいて来たら、目を閉じ、顔を下向き加減にして、じっとしているようにしましょう。しかし、いったん攻撃を受けると攻撃に加わるハチが増えるため、急いでその場から離れてください。また、スプレー式の殺虫剤を使用しても良いでしょう。
アレルギー体質の人や以前ハチに刺されたことのある人は、注意が必要です。なかでも、野山での作業をする人は、万が一に備えて自己注射用アドレナリン注射液を常に携帯する等の対策をとることが望ましいでしょう。一度かかりつけの医師に相談されることをお薦めします。

・薬物アレルギー
薬を飲んで発しん等の皮膚に異常がみられた場合は、薬物アレルギーの疑いがあります。ただちに服用を中止し、医師や薬剤師に相談してください。多くの場合、原因薬物の服用を中止後、数日間のうちに改善しますが、場合によっては数週間経過してから症状が悪化することがあるので注意しましょう。
また、以前に何らかの薬物でアレルギーを起こしたことのある場合は、市販薬の購入や処方を受ける際には、必ず医師や薬剤師に伝えるようにしてください。

・ラテックスアレルギー
ラテックスアレルギーを予防するためには、ラテックス蛋白という部質の残留量の多い製品の使用を避け、合成ゴムの製品を使用する等の対策が必要となります。ラテックスアレルギーの危険性が最も高い医療従事者で手指にアトピー性皮膚炎や接触性皮膚炎がある場合や、繰り返し医療処置を受けている患者さんやバナナ、アボガド、キウイフルーツ、クリ等の食品に対してアレルギーを有する人は特に注意が必要です。

・運動誘発アナフィラキシー
運動が刺激になってアナフィラキシーを起こし、じんましん、呼吸困難や血圧低下等がみられることを運動誘発アナフィラキシーといいます。運動誘発アナフィラキシーは、運動刺激が神経を介して肥満細胞からケミカルメディエーターを放出させることで発症するといわれていますが、その仕組みについてははっきりとは分っていません。通常、皮膚症状が運動後30分以内に表われ、その後呼吸困難、発汗、意識障害等が表われます。運動制限による予防が最も効果的です。

・食物依存性運動誘発アナフィラキシー
ある特定の食物で、普段は食べても何ともないのに、食べた後に運動をするとアナフィラキシーを起こすことがあります。これは食物依存性運動誘発アナフィラキシーとよばれ、運動によって原因食物の吸収が増加して起こるといわれていますが、その仕組みについてもはっきりとは分っていません。
ある特定の食物を食べた後2〜3時間以内に運動を行ったときに、運動誘発アナフィラキシーと同様のアナフィラキシー症状が表われます。
例えば、“学校で給食を食べ、昼休みにスポーツに興じてじんましんが出た”というような場合は、食物依存性運動誘発アナフィラキシーの疑いがありますので医師の診察を受けることをお勧めします。
食物依存性運動誘発アナフィラキシー対策としては、原因食物を避けること、食後3時間以内の運動を制限すること等があげられます。

アナフィラキシーショックにならないようにするには

原因となるアレルゲンを避けることです。特定の食物や薬物に対してアレルギーのある方は、それらを摂取・服用することのないよう注意が必要です。また、自分がハチ毒に対してアレルギーであることが分っている場合は、ハチの居る場所には近づかない、肌を露出しない等の対策が必要になります。

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