アナフィラキシーショック(1)前編〜生命をおびやかす急性アレルギー反応〜

説明

1902年、リチェットとポーチャーの2人の学者によりアナフィラキシーという言葉が誕生しました。記録には「イソギンチャクの毒素を犬に注射し、2〜3週後に同じ毒素を再び注射をすると、犬は嘔吐、出血性下痢などのショック症状を示し、死亡した。」とあります。このような現象は免疫とは反対の意味をもつ現象であり、防護状態「フィラキシー(-phylaxis)」とは反対「アナ(ana-)」の状態という意味で、アナフィラキシー(ana-phylaxis)と命名されました。
アナフィラキシーの症状が強く、意識がもうろうとしたり、血圧が低下したりする状態をアナフィラキシーショックといいます。
アナフィラキシーは、ハチ毒、食物、薬物、ラテックス(天然ゴム)等が原因で起こる急性アレルギー反応のひとつです。

アナフィラキシーショックとは

・アナフィラキシーの起こり方
アレルギーの原因となる物質のことを“アレルゲン”(抗原)と呼びますが、そのアレルゲンが体の中に入ってくると、そのアレルゲンに対するIgE抗体が作られます。これを特異的抗体とよびます。特異的抗体は、肥満細胞や好塩基球という細胞の表面にくっつきます。
その後、同じアレルゲンが再び体の中に入ってくると、そのアレルゲンが肥満細胞や好塩基球上のIgE抗体とくっついて、抗原抗体反応が起こります。これにより、肥満細胞や好塩基球が刺激 を受けて細胞の中の活動が活発になり、ヒスタミン等のケミカルメディエーターが放出され、臓器で働くことで、様々な症状が引き起こされます。

・アナフィラキシーの症状
よくみられる症状として、じんましん、呼吸困難、腹痛、嘔吐、下痢、および血圧低下を伴うショック等があります。これらの症状は、人によって、またアレルゲンの量等によっても異なります。じんましん等の皮膚症状は、始めにみられることが多く、また9割以上の患者さんに出てくるといわれています。
アナフィラキシー症状がでる時間はアレルゲンによって異なります。ハチに刺された時のように、皮膚から体内に直接ハチ毒等のアレルゲンが入ったときには、刺されて数分〜15分以内には症状がでてきます。それに対し、食物の場合食べて胃や腸で消化・吸収されてからアレルゲンになるため、食後30分〜1時間位はかかります。
また、数時間後に症状が再び表われることもあり、一度、症状が落ち着いたからといって油断できません。
アナフィラキシーで恐いのは、ショック等により死に至ることがあることです。その多くは、喉の腫れや痛み等を伴う気道閉塞(気道が塞がれること)、不整脈による心停止、重篤な酸素欠乏状態、血圧低下等が原因になっています。

もしアナフィラキシーショックになってしまったら

アナフィラキシーショックは生命をおびやかす危険な状態です。直ちに医療機関で受診しましょう。
ハチ刺しの応急処置として、冷水で冷やし四肢を刺された場合心臓に近い方をゴムなどで縛ります。また、アンモニア(尿)はハチ毒を中和する作用はなく、逆に皮膚炎を誘発し、細菌感染を引き起こすため使用しないで下さい。もし、全身症状が認められた場合、第3者に連絡をとり仰臥位か足側高位(ショック体位)の姿勢(決して背負わないで下さい)を保ち、すぐに医療機関で受診して下さい。また、自身による自動車運転は、危険ですので決して行わないで下さい。

※次回は、アナフィラキシーショックの予防と対策アナフィラキシーショックにならないようにするにはについて説明します。

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