去る11月21日、高円宮憲仁親王殿下が47歳という若さでご逝去されました。宮内庁によると、宮さまはカナダ大使とスカッシュをしている途中突然倒れたとのことです。救急車で病院に運び込まれたときにはすでに心肺機能は停止しており、心臓マッサージや人工心肺装置による救命措置の甲斐なく回復されませんでした。翌日の報道で宮さまの死は心室細動による突然死と発表されました。
突然死とは「予期せぬ突然の病死」で、医学的には発症から死亡までの時間が24時間以内の死と定義されています。突然死の原因では、急性心筋梗塞、狭心症、不整脈など心臓病によるものがその6割を占め、その他脳血管障害、消化器疾患などがあります。突然死のうち心臓由来のものを特に心臓突然死といい発症から1時間以内に死亡するため瞬間死とも言われ、わが国では年間5万人を数えます。
普段規則正しく拍動する心臓のリズムが不規則になってしまうものを不整脈といいます。その中には心臓突然死の原因になってしまうものもあります。中でももっとも危険なのが、心室に異常な電気信号が発生して心拍数が急激に増加する心室頻拍と心室細動です。心室細動では心拍数は1分間に400〜600回に達し、心室が全体で収縮せず一部分ずつでしか収縮しないので心臓から血液が拍出されず、脳に虚血がおこり死に至ります。心室細動で倒れた人を救う方法は発作直後から心臓マッサージと人工呼吸を同時に行い、救急車を呼ぶしかありません。救急医療では除細動器で心臓に直接瞬間的に電流を流し心室細動を停止させます。
もし定期検診などの心電図検査で心室頻拍や心室細動の診断が下ると、抗不整脈薬の投与と原因の箇所を焼くカテーテル焼灼術が行われます。これで治らない場合、救急時に使う除細動器を小型化したペースメーカー機能つきの機械を皮下に植え込みます。この機械は20年前にアメリカで開発され日本では3年前から使用されるようになりました。心室細動が起こるとセンサーがこれを感知し、速やかに電気ショックを起こすように設計されています。しかしながら検査で異常が発見されない前兆のまったく無い心臓突然死につながる心室細動も存在します。こうした心室細動にはストレスが大きく関わっていると考えられています。事実、阪神淡路大震災やロサンゼルス地震などの際には心臓突然死が急増したと報告されています。日ごろのストレス解消が突然死予防にもつながるというわけです。
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