ロコモティブシンドローム 〜寝たきりにならないために〜

ロコモティブシンドロームとは

2007年、日本整形外科学会は以下のような経緯からロコモティブシンドローム(運動器症候群)と言う概念を新たに提唱致しました。運動器とは動作に関わる骨、筋肉、関節、神経の総称です。

先進国の中でも我が国は他の国々よりいち早く超高齢化社会をむかえ、それに伴い様々な問題が現われてきています。特に、介護を必要とする人が急増しているのに対し、その受け皿はまだまだ不十分な状態です。そこで介護サービスを受ける前の家庭での対策が急務であると考えられ始めました。

要介護となる原因としては脳血管障害や認知症と並んで運動器障害が最も多く、これらの認識を高めるために医療界から新しい考えが導入されました。それが「ロコモティブシンドローム(運動器症候群、ロコモ)」です。ロコモティブシンドロームは認知症や脳血管障害の原因となるメタボリックシンドロームに対して、運動器障害の原因になるものとして提唱された新しい概念で、運動器障害による要介護や要介護リスクの高い状態を言います。

また、ロコモティブシンドローム対策は認知症対策、メタボリックシンドローム体策にも通じており、これらは切り離すことの出来ない関係にあり、その重要性が高まって来ました。

ロコモティブシンドロームの原因

ロコモティブシンドロームには以下の問題を原因とするものの総称です。

1.腰部脊柱管狭窄症(背骨の変形により下半身に神経痛が出る病気)
2.変形性関節症(歩行障害の原因となる下半身の関節である膝、股関節の病気)
3.骨粗鬆症と脊椎圧迫骨折(加齢により骨がもろくなって背骨がつぶれる病気)
4.脊柱変形(脊柱後弯・側弯)
5.易転倒(運動機能の低下により転倒し易くなること)
6.下肢の骨折(太ももの骨折をはじめ歩行障害の原因となる)
7.脊髄障害(頭部外傷や脳梗塞、脳出血により全身の運動神経麻痺の原因となる)
8.神経・筋疾患(パーキン病や筋ジストロフィーなど歩行障害を起こす病気)
9.関節リウマチなどの関節炎(特に下半身の関節を侵し歩行障害の原因となるもの)
10.下肢切断(外傷の他、糖尿病など下半身の血管異常を起こし、やむなく行われる)
11.長期臥床による廃用症候群(筋力低下、心肺機能低下、認知症の原因となる)

ロコモ度テスト

2013年、日本整形外科学会はロコモティブシンドローム予防啓蒙のため20代から70代まで世代ごとのロコモ危険度判定をするための指針として「ロコモ度テスト」策定しました。 これは(1)下肢筋力、(2)歩幅、(3)身体状態・生活状況の3種類のテストからなり、年齢相応の基準に達していない場合、将来のロコモ危険度が高いと見なすものです。

(1)下肢筋力判定法「立ち上がりテスト」
男女別に台の座り立ち上がれる台の高さで判定します。60代までは片足で、70代以上は両足で立ち上がり、その高さが低い程よいと見なします。
(2)歩幅反対法「2ステップテスト」
男女別にできるだけ大きく2歩進んだ歩幅を身長で割った値で判定します。
(3)身体状態・生活状況判定方法「ロコモ25」 25問の設問の回答を5段階で算出し、その合計点で判定します。 日本整形外科学会・ロコモ度テスト[ PDF ]

ロコモティブシンドロームの予防と対策

ロコモティブシンドロームは運動器の経年による障害が原因になって発生します。一旦障害を起こすとなかなか解決するのは難しく、何よりその予防が重要です。

そのためには日頃の心掛けが大切です。「運動器」の能力を維持し向上するにはまさに 「運動」が有効です。特に下肢(下半身)の運動が重要です。最も身近な運動は歩行です。ウォーキングはもちろん、わざわざ準備せずとも、日頃から歩くことを習慣づけることで様々なロコモティブシンドロームの原因を除去できます。

また、若い時分にやった心得のあるスポーツ、家庭でできるラジオ体操など手軽なスポーツ全般もロコモティブシンドロームの予防効果が期待できます。地域のケミュニティー・センター主催の体操、ヨーガ、太極拳、最近流行りのフラダンス、ピラティスなど激しくなくても身体を動かすものは全て有効です。

「運動」を始める際、気を付けなければならないのは、既に下半身の運動器に疾患がある場合です。 基本的には症状を悪化させるタイプの運動は避けるべきです。専門の医療者の意見を聞き、多種ある運動の中から、やっても問題のないものを選んで始めてみて下さい。

また、肥満は運動器障害の最大の原因となります。安静より動作は運動器への負荷が増大し障害発生のリスクを高めます。食事制限と並行して運動量を調整しながら徐々に負荷を増やしていって下さい。

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