●説明
日本人のライフスタイル、食生活、社会環境などが時代と共に変わり、かかる病気も少しずつ変化してきました。昔は、結核などの感染症が多かったのに対して、現在は動脈硬化、高血圧、悪性腫瘍、糖尿病などの“生活習慣病”が年々増加しています。
WHOの診断基準(収縮期血圧140mmHg又は拡張期血圧90mmHg以上)によると推定では日本の高血圧症は3,000万人を越えていると言われています。
3大生活習慣病の1つである高血圧症は、自覚症状が現れないことが多いことから「サイレントキラー(静かなる殺人者)」と言われています。
●高血圧症とは(原因・症状等)
高血圧症は本態性高血圧症と二次性高血圧症の2つに分類されます。
1. 本態性高血圧症
原因の特定できない高血圧で、遺伝要因と生活習慣環境要因が複雑に絡み合って発病すると考えられています。また、動脈硬化が進むとスムーズな血流を妨げて、血圧を上昇させる原因となります。本態性高血圧症は生活習慣病の代表といってもよい病気で高血圧症のうちの90〜95%がそれに値します。
2. 二次性高血圧症
他の病気を伴って起こる原因が明らかな高血圧で、全体の5〜10%にあたります。二次性高血圧症は4種類に分類されます。1つは腎臓に異常があるために起こる腎性高血圧、2つ目は腎臓の血管に異常があり起こる腎血管性高血圧、3つ目はホルモンの異常で起こる内分泌性高血圧、4つ目は大動脈や大動脈弁に異常があり起こる大血管疾患による高血圧です。
高血圧には特にこれといった目立った症状がなく、10年から15年かけてゆっくりと進行するため、知らないうちに重篤な合併症を引き起こすことがあります。はっきりとした症状が現れた時にはかなり危険な事が多く、それが「サイレントキラー(静かなる殺人者)」と呼ばれる由縁でもあります。
症状として、肩こりや頭痛、めまい、耳鳴り、動悸、息切れ、顔の火照り、吐き気などがありますが、これらの症状は疲れやストレス、風邪など様々な病気でも起こる症状で必ずしも高血圧が原因とは断定できないのです。
●もし高血圧症になってしまったら
高血圧症の治療は、高血圧の程度や合併症、危険因子などを考慮しつつ行われます。高血圧症の治療の第1ステップとして生活習慣の改善(食事や運動などの一般療法)が必須となります。
食事療法
高血圧症の食事療法は、減塩、肥満防止食の摂取、バランスのとれた食生活の3つが基本です。1日の塩分摂取量は成人で10g以下が好ましいとされています。塩分量の目安は、塩小さじ1杯5g、醤油小さじ1杯2.2g、味噌小さじ1杯1gです。
運動療法
様々な運動のなかでも、高血圧の予防や治療には、体内に大量の酸素を取り入れながら行われる有酸素運動が有効です。
有酸素運動とは、ウォーキング、水泳、ジョギング、サイクリングなどです。これらの運動を日常生活の中にうまく組み入れて、続けていくことで効果が得られます。
治療の一つとして運動を取り入れる場合は、体の状態に応じて適切な運動をする必要があります。
薬物療法
高血圧はそれ自体が害を及ぼすわけではなく、長期的に脳や心臓、腎臓の血管に負担をかける事で臓器障害を起こす事が問題になります。高血圧の薬物治療も、臓器障害の予防や進行を抑える事が目的となります。血圧を下げる薬(降圧薬)に市販されているものはなく、すべて医師の判断によって処方が行われます。薬物治療を始める上でまず考えるのが、その人の高血圧リスクの程度です。日常生活や食生活の改善で血圧が下がるようであれば降圧薬の服用は行わないようにします。日本高血圧学会では高血圧治療のガイドラインを出しており、それによると高リスク群では初めから降圧薬の服用を開始しますが、中等リスク群では生活習慣の改善を3ヶ月、低リスク群では6ヶ月続けても最高血圧で140mmHg/最低血圧で90mmHgを下回らない場合に降圧薬の服用を開始するとしています。
●高血圧症の予防と対策
高血圧症の予防策は若年期からの「よい生活習慣」を確立する努力が大切です。中年を過ぎた方は家庭で定期的に血圧を測定する習慣をつけましょう。家庭で行える予防策は以下の通りです。
・カリウムの多く含む食品を摂る(ほうれんそう、ブロッコリー、カボチャなど)
・カルシウムやマグネシウムを摂る(ひじき、小松菜、大豆など)
・ 塩分を控えて高脂肪食を減らす
・ 禁煙する
・ 適度な運動を心がける(散歩、水中ウォーキングなど)
・ 睡眠を十分にとる(7〜8時間を目安に)
・ 体調の変化に十分注意する など
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