人気ロックバンドのリードボーカルが、突然の体調不良のため全国ツアーの全ての日程の中止を余儀なくされました。その後所属事務所から「小脳梗塞の疑いがあるため検査入院した。」と発表されました。
小脳は大脳半球の後下方に位置していて、大脳と脊髄の中間の伝導路にあって錐体外路系の重要な働きをしている部分です。その機能は主に運動や平衡の調節中枢をなしています。つまり身体の円滑な運動を行なうための自動調節器として、身体中の筋肉に適切な緊張や弛緩を司令して、全体が平衡関係を保って、歩行、その他の複雑な動作を可能にさせています。もし何らかの理由で小脳に障害が起きると、以下の症状が現れます。
1.歩行しずらい(歩行失調)
2.姿勢の保持ができない(姿勢反射失調)
3.手足が自由に動かない(四肢失調)
4.ろれつが回らない(小脳性構音障害)
しかしながら、小脳は生命に絶対欠かせないというわけではなく、手術などで仮に失うことがあっても別状はありません。
小脳梗塞とは、この小脳の組織が血液の循環障害によって、不可逆的に虚血性壊死した状態を言います。病理学的には、小脳軟化と同一の意味です。
小脳梗塞となる危険因子としては、
1.粥状硬化症
2.高血圧
3.高脂血症
4.糖尿病
5.心疾患(特に心房細動は脳塞栓症の原因になります。)などがあります。
また、クモ膜下出血と異なり、小脳梗塞をはじめとする脳梗塞は男性の発症率のほうが高いのです。
小脳梗塞は分類上、小脳塞栓症と小脳血栓症に分けられます。小脳塞栓症は、脳血管以外、主に心臓内の血栓が遊離して小脳血管を閉塞して発生する梗塞です。一方小脳血栓症は小脳の動脈に血栓は形成されて小脳の血管の閉塞を来して発生する梗塞です。
小脳梗塞の主症状である歩行失調は、単純なめまいと間違えられやすく、見過ごされがちですが、他の部分の脳梗塞に先行して発症することもあります。めまい感があり運動失調が認められた場合は、迷わず病院で検査を受けなければなりません。
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