薬害エイズ事件で国や製薬会社を相手取って訴訟を起こした問題がマスメディアで報じられている。それによると1996年から2005年の10年間で死亡した119人の4割である40人が同じ原因で死亡していた。それによると非加熱血液製剤でエイズウイルス(HIV)感染した9割以上がC
型肝炎ウイルス(HCV)にも重複感染し、エイズではなく肝硬変、肝臓癌などの肝疾患で死亡するケースが急増している。
では、なぜ我が国において急増したのかを考えると、原因は、たとえばヒト血友病患者に対して輸血をする際に、かつては加熱処理を施さない血液などを用いていたためだと言われている。輸血用血液は国内では需要が間に合わず、主にアメリカから輸入していた。1980年のレーガン政権時代アメリカはHIV感染症の急増・蔓延時期にあった。この時期の輸血による血液がHCVやHIVに感染していると、非加熱状態ではウイルスは死滅せず患者の体内に侵入する。そもそもエイズは20年から30年前のベトナム戦争時代のフリーセックスや薬物乱用が感染原因と言われている。また、わが国では過去の売血制度の産物であるとされている。
宿主の免疫力により感染から発症までの期間はそれぞれ違い、HCV感染後、慢性肝炎までは20〜30年後、HIV感染から発症までは平均10年〜20年とされている。HCV感染後は、一部が慢性肝炎、肝硬変、肝臓癌の順序を辿るといわれる。
さて、エイズは北西アフリカの風土病と言われており、交通の発達、奴隷の売買により世界中に蔓延したと考えられる。また同じ風土病としては梅毒があり、これは南部アメリカ大陸インディアンより感染し、大航海時代に世界中に蔓延した事実があり、エイズも同様の経過を辿っていることはまことに興味深いものがある。
ともかく、インフルエンザウイルスも含めて、各種の感染症に対しては、世界各地の気候、風土を越えて感染経路をもう一度チェックし、研究して対応策を勘案していくことこそ、悲劇を繰り返さない社会につながるのではないだろうか。今こそ、温故知新の意義を共有すべきであろう。
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