●説明
食中毒とは有害な微生物や毒物に汚染された食べ物や飲み物を摂取したことによって、比較的急激に体調を崩す健康被害です。
高温多湿となる梅雨時期から八月にかけて、発生件数が最も多くなります。ただ、近年では暖房機器の普及、輸入食品の増加が影響して一年を通じて食中毒が起こりやすく、夏に限らず一年中注意が必要といえます。
前回まで食中毒の原因や症状、「もし、食中毒になってしまったら」について、解説しましたが、今回はその予防法について解説します。
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●食中毒の予防と対策
食中毒を予防する三大原則は「つけない」「ふやさない」「やっつける」を守ることです。
食材の保存の段階から注意しましょう。
- 調理前はもちろん、調理中もまめに手を洗いましょう。
- 調理器具の洗浄に努めましょう。海産魚介類を調理したまな板や包丁を、洗わずに他の食材の調理に使用すると菌がうつります。海産魚介類は加熱をして菌を処理できても、サラダなど生で食べる食材を介して食中毒に感染したケースがあります。
- 傷口は黄色ブドウ球菌が繁殖しやすくなります。大きなアカギレなど、手に傷のある時はゴム手袋や指サックを使うようにして、食材には直接触れないようにしましょう。
- 食中毒を起こす菌は土壌にも棲んでいます。汚染された水が飲料水に流れ込むことがないか、井戸水を飲用する場合は定期的に水質検査を受けているか確認しましょう。
- 人の鼻やノドに住み着く菌もあります。少数の菌では健康被害はでませんが、くしゃみなどから食材に感染し増殖した結果、食中毒に発展することもあるので調理中はマスクをするとなおよいでしょう。
- 乳幼児離乳食に蜂蜜は用いないようにしましょう。ミツバチは花粉を運びますが、花粉にボツリヌス菌の芽胞(植物でいう種)が付着していることがあり蜂蜜にも混入します。芽胞は体内に入っても大腸内に住んでいる細菌の作用で通常は繁殖できません。しかし、乳幼児の場合、大腸内の細菌叢が形成されず菌が繁殖します。その結果、腸内で増殖した菌が産生する毒素により呼吸麻痺などの症状を引き起こします(乳児ボツリヌス症)
- 菌が増殖しないように調理後の食品は早めに食べましょう。
- 賞味期限に関係なく、開封後は早めに使いきりましょう。
- 常温では食材の中で菌が増殖します。生鮮魚介類はすべて10℃以下にして保存しましょう。菌の増殖を食い止めることができます。ただし冷蔵庫の過信は危険です。7割以上詰め込むと十分に温度が下がらず、菌の増殖を食い止めることができません。
- 缶詰、瓶詰め、真空パックが膨れ上がっているような食材は食べないようにしましょう。空気がないところでも繁殖できる菌がいます。缶や瓶、真空パックの中でも増殖することは十分考えられます。
- 細菌を死滅させるのに最も効果が高いのが加熱することです。食材全体が75℃以上で1分間以上になるまで加熱調理をしましょう。
大きな食材は中心部が75℃以上になるようにします。量が多いときには切ったり途中でかき混ぜたりして全体が加熱されるようにしましょう。
- 調理器具は使用後、70℃以上の熱湯で殺菌しましょう。
以上のように食中毒は、腹痛や下痢など急性胃腸炎をひきおこすとイメージされますが、時には呼吸障害など重篤な神経麻痺症状を引き起こすものありますので油断は禁物です。正しい知識をもって日ごろから注意することが肝心です。調理の段階でいくら注意しても、食材が汚染されていては食中毒を防ぐことはできません。食中毒にかかるのに十分な菌の繁殖があっても、味やにおいは変わらないので、調理段階で避けるのは困難です。食品を買ってきて保存するところから、食中毒予防は始まっていると考えましょう。
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